代表 山本忍のコラム

Amazing Journal

「強いチーム」に必要なのは、仲の良さだけではない ― サッカー日本代表から学んだ、心理的安全性と組織づくり ―

「強いチーム」に必要なのは、仲の良さだけではない ― サッカー日本代表から学んだ、心理的安全性と組織づくり ―

業績が伸びている。
新しいアイデアが生まれる。
人が育ち、組織が活性化している。

そんな「成長する組織」には、何があるのでしょうか。

優秀な人材でしょうか。
優れた戦略でしょうか。
それとも、強いリーダーシップでしょうか。

もちろん、どれも大切です。

でも、さまざまな企業や自治体の人材育成に関わる中で、私が強く感じていることがあります。

それは、

成長する組織には、「人が安心して自分の言葉を発することのできる土壌」がある。

ということです。

「何も言わない」は、本当に問題がない状態?

会議で上司が、

「何か意見ある?」

と聞いても、誰も手を挙げない。

新しい企画について、

「どう思う?」

と聞いても、

「特にありません」
「大丈夫です」

という言葉しか返ってこない。

一見すると、波風もなく、うまくまとまっている組織に見えるかもしれません。

でも、本当にそうでしょうか。

もしかすると心の中では、

「言っても変わらない」

「余計なことを言って評価を下げたくない」

「間違ったことを言ったら恥ずかしい」

「上司の意見に反対しない方がいい」

と思っているのかもしれません。

もしそうだとしたら、「発言がない」のではなく、

「発言できない空気」がある

可能性があります。

心理的安全性とは「仲良し」であることではない

そこで重要になるのが、心理的安全性です。

心理的安全性というと、

「みんなが仲良くすること」
「優しい職場にすること」
「何を言っても許されること」

と思われることがあります。

しかし、心理的安全性は単なる「居心地のよさ」とは違います。

私は約14年間、プロスポーツ選手のマネジメントに携わり、サッカー日本代表選手をはじめ、多くのトップアスリートやチームと接してきました。

そこで実感したのは、

強いチームだからといって、全員が仲良しなわけではない

ということです。

当然、人間ですから相性もあります。

考え方も性格も違いますし、「好き・嫌い」という感情が生まれることもあります。

それでも、ピッチに立てば同じゴールを目指すことができる。

なぜなら、

「この試合に勝つ」
「日本代表として結果を出す」

という、共通の目的・目標があるからです。

強いチームは「違い」を乗り越えていく

組織やチームの成長過程を説明するものに、タックマンモデルがあります。

チームは、集まった瞬間から完成しているわけではありません。

形成され、意見の違いや衝突が起こり、それを乗り越えながら関係性や役割が整い、やがてチームとして高い成果を発揮できるようになっていく。

私はサッカーの世界で、その過程を実際に何度も見てきました。

大切なのは、

「意見が違わないこと」ではなく、違っていても共通の目的に向かって進めること。

人として好きか嫌いかという感情を超えて、

「この人には、自分にはない強みがある」

「この役割は、この人だからできる」

と互いの違いや力を認め合う。

それが、本当の意味でのチームワークにつながっていくのだと思います。

成長する組織には「新奇歓迎」がある

そして、もうひとつ私が大切にしているのが、

「新奇歓迎」

という考え方です。

新しい意見。
今までとは違う方法。
若手からの提案。
異なる価値観。
失敗から生まれた気づき。

こうした「これまでになかったもの」が出てきたときに、

「前例がないから」
「今までこうしてきたから」
「そんなの無理でしょう」

と最初から閉じてしまうのか。

それとも、

「面白いね」
「もう少し聞かせて」
「まずやってみようか」

と受け止められるのか。

この違いは、組織の未来を大きく左右します。

新奇歓迎とは、何でも無条件に受け入れることではありません。

違う意見や新しい考えを、まずはテーブルの上に載せてみること。

そして、組織の目的・目標に照らし合わせながら、対話していく。

そのためにも、心理的安全性が必要なのです。

安心だけでは、組織は成長しない

ただし、心理的安全性を高めること自体がゴールではありません。

安心して話せる。

違う意見も言える。

新しいアイデアを出せる。

そのうえで、

「では、私たちは何を目指すのか」
「そのために、自分は何ができるのか」

を一人ひとりが考え、行動していく。

ここまでつながって初めて、心理的安全性が組織の力になります。

私は、成長する組織には、

安心 → 対話 → 新奇歓迎 → 挑戦 → 行動 → 成長

という循環があると考えています。

安心して話せるから、対話が生まれる。

違いを認められるから、新しい意見が生まれる。

新しいものを歓迎するから、挑戦が始まる。

挑戦するから、成功も失敗も経験できる。

そして、その経験から人と組織が育っていく。

心理的安全性とは、人を守るためだけではなく、人が一歩踏み出すための土台なのです。

心理的安全性は、上司だけがつくるものではない

もちろん、上司やリーダーの言動は大きな影響を与えます。

部下が意見を言ったときに、

「でもさ」
「それは無理でしょう」

と最初から否定するのか。

それとも、

「そう考えた理由をもう少し聞かせて」

と受け止めるのか。

この小さな違いが、次にその人が発言するかどうかを左右します。

一方で、心理的安全性は上司だけがつくるものでもありません。

挨拶する。

話を最後まで聴く。

「ありがとう」と伝える。

困っている人に声をかける。

違う意見をすぐに否定しない。

失敗した人を責める前に、一緒に原因を考える。

一人ひとりのこうした日常の行動が、組織の「空気」をつくっていきます。

人が育つ組織には「安心して挑戦できる仕組み」がある

人には、それぞれ違った強みと可能性があります。

全員が同じ考えになる必要はありません。

サッカーのチームと同じように、ポジションも、得意なことも、考え方も違っていい。

大切なのは、

「私たちは何のために、このチームにいるのか」

という目的を共有していること。

そのうえで、お互いの違いを認め、新しいものを歓迎し、自分の意見を自分の言葉で伝えられる。

そして、

「やってみよう」と言える組織へ。

「失敗した。でも次はこうしてみよう」と言える組織へ。

そこに、人と組織が成長し続ける力が生まれるのだと思います。

人がいきいきと育つ組織には、仕組みがあります。

その大切な土台のひとつが、心理的安全性です。

共通の目的を持つ。
違いを認め合う。
新しいものを歓迎する。
自分の言葉で伝える。
そして、自ら考え、決め、動く。

一人ひとりのその一歩が、やがて組織の大きな力になっていきます。

A figure standing proudly on a podium, surrounded by cheering teammates