代表 山本忍のコラム

Amazing Journal

「経営者が試されるのは、決断した“後”である」 ― 成果が見えない「タイムラグ」をどう乗り越えるか ―

「経営者が試されるのは、決断した“後”である」 ― 成果が見えない「タイムラグ」をどう乗り越えるか ―

新しい事業を始めた。

組織改革に踏み切った。

新しい人材を登用した。

これまでとは違う方向へ舵を切った。

経営者には、「決めなければならない瞬間」が何度も訪れます。

情報を集め、考え抜き、時には周囲の反対も受けながら、

「これでいく」

と腹を括る。

ところが、本当に苦しいのは、そのあとだったりします。

決断した。

行動した。

それなのに――

なかなか成果が見えてこない。

売上がすぐに上がるわけでもない。

社員がすぐに変わるわけでもない。

新しい取り組みがすぐに浸透するわけでもない。

すると、

「この判断は、本当に正しかったのか」

「もっと違う方法があったのではないか」

「今なら、まだ元に戻せるのではないか」

という迷いが生まれます。

私は、この「決断してから、現実に結果として現れるまでの時間」を、

タイムラグ

と捉えています。

そして、経営者やリーダーが本当に試されるのは、決断した瞬間よりも、むしろこのタイムラグの時間なのではないかと思っています。

経営には「決めたのに、まだ見えない時間」がある

私自身、2010年に会社を立ち上げてから、たくさんの決断をしてきました。

うまくいったこともあれば、

「なぜ、また同じようなことで悩んでいるんだろう」

と思ったこともあります。

そこで自分の過去を振り返ったとき、気づいたことがありました。

人や環境が変わっても、

自分自身の物の観方や選択、行動が変わらなければ、似たような現実を繰り返すことがある。

ということです。

だからこそ、

「ここで自分が変わらなければ、未来も変わらない」

と腹を括り、これまでとは違う選択をする。

すると、新しい人との出会いや、思いもしなかった機会が生まれ始めます。

しかし、自分が変わった瞬間に、現実がすべて変わるわけではありません。

経営も組織づくりも、人材育成も同じです。

決断と成果の間には、時間があります。

「見えない・知らない・わからない」に、経営者はどう向き合うか

タイムラグの中で人を不安にさせるのが、

見えない。
知らない。
わからない。

という状態です。

経営では、すべての答えが揃ってから決断できるとは限りません。

むしろ、答えがない中で決めなければならないことの方が多いのではないでしょうか。

ところが、成果がなかなか見えないと、

「やっぱり間違っていたのではないか」

という声が自分の中から聞こえてきます。

私が「取り越しグロー」と呼んでいる存在です(笑)。

「そんなことをしなければよかったんじゃない?」

「今までのやり方の方が安全だったんじゃない?」

「結果が出なかったらどうするの?」

変革期ほど、この声は大きくなります。

なぜなら、人は慣れ親しんだ状態に安心を感じるからです。

そしてこれは、経営者だけではありません。

組織改革を始めれば、社員にも同じことが起こります。

「以前の方がよかった」

「どうして変える必要があるの?」

「今まで通りでいいのでは?」

だからこそ、変革には一定の「揺り戻し」があることを、リーダー自身が知っておく必要があります。

組織が変わるときには「成長痛」が起きる

新しい制度を導入する。

評価制度を変える。

若手を抜擢する。

DXを進める。

新しい事業へ挑戦する。

組織が本当に変わろうとするとき、必ずしも最初からすべてがスムーズに進むわけではありません。

これまでのやり方との摩擦が起こり、戸惑いや反発が生まれることもあります。

私は、それをある意味での**「組織の成長痛」**だと捉えています。

ここで大切なのは、無理に、

「絶対うまくいく!」

とポジティブになることではありません。

問題が起きているなら、きちんと見る。

現場の声も聴く。

数字も検証する。

必要なら方向修正する。

でも、

「まだ結果が出ていない」という理由だけで、決めた未来そのものを簡単に諦めない。

ここを分けて考えることが重要です。

「世界線から降りない」とは、頑固にやり続けることではない

私はこれを、

「一度決めた世界線から、簡単に降りない」

と表現しています。

これは、一度決めたことを何が何でも変えてはいけない、という意味ではありません。

経営ですから、検証した結果、戦略を変える必要があれば変える。

撤退すべきなら撤退する。

やり方は、いくらでも変えていい。

でも、

「自分たちは、どんな会社をつくりたいのか」
「何のために、この変革を始めたのか」

という目的まで、不安によって簡単に手放さない。

経営者が迷えば、組織も迷います。

だからタイムラグの時間こそ、

「私たちは、どこへ行くと決めたのか」

を何度でも言葉にして、組織と共有することが大切なのだと思います。

リーダーの不安は、組織に伝わる

経営者だって、人間です。

不安になる。

怖くなる。

「本当にこれでいいのか」と迷う。

それ自体は、決して悪いことではありません。

むしろ重要なのは、

自分が今、何に不安を感じているのかに気づいていること。

ここで役に立つのが、私が大切にしているマインドフルネスです。

マインドフルネスは、何も考えないことではありません。

「今、自分は何を考えている?」

「何を怖がっている?」

「事実と、自分の不安を混同していないだろうか?」

と、一度自分を客観的に見る。

感情に気づき、「今ここ」に戻る。

そして、

「では、今、自分にできることは何か」

を考える。

リーダーが自分の心を調えることは、自分自身のためだけではありません。

その在り方は、言葉や表情、判断を通して組織全体へ伝わっていきます。

タイムラグは「待つ時間」ではなく、「組織を育てる時間」

成果がまだ出ていない。

だから、何も進んでいない。

そう考える必要はありません。

私は、経営におけるタイムラグとは、

決めた未来に、組織と人が追いついていく時間

でもあると思っています。

新しい考え方が浸透する。

社員が少しずつ行動を変える。

失敗から学ぶ。

小さな成功事例が生まれる。

それを組織で共有する。

そして、次の挑戦につなげる。

その積み重ねによって、あるとき数字や成果として表に現れ始めます。

だから、結果が見えない時間にこそ、

「何も起きていない」

ではなく、

「今、何を育てる時間なのか」

と捉えてみる。

この物の観方の違いが、リーダーの次の行動を変えていきます。

「決めたら、動く。そして、育てる。」

経営には、絶対の正解はありません。

だからこそ、自分たちの目的を言葉にする。

決断する。

行動する。

検証する。

必要ならやり方を変える。

そしてまた動く。

決めたら、動く。

ただし、動いたらすぐに答えを求めるのではなく、

成果になるまで育てる。

私は、この時間まで含めて「決断」なのだと思っています。

もし今、あなたの会社が変革の途中にいて、まだ思うような成果が見えていないのなら。

もう一度、自分自身に問いかけてみてください。

「私たちは、何のためにこの決断をしたのか」

そして、

「今、この会社の未来のために、何を育てる時間なのか」

と。

経営者が描いた未来に、現実が追いつくまでには時間がかかることがあります。

だからこそ、

決めた未来から簡単に降りない。
目の前の現実を見ながら、今日できる一手を打ち続ける。

その積み重ねが、人を育て、組織を変え、やがて成果として現れていくのだと思います。